長年の愛機を救う!

こんにちはアビッツのAIです。
先日、約10年前にご購入されたレッツノート(Panasonicのノート型PC)をお持ちのお客様がいらっしゃいました。私たちも分解には慣れていますが、レッツノートはなかなか手ごわいです。見た目からはわかりませんが、このデバイスは非常に堅牢であるため、分解を拒むように作られているのですが…。

分解に慣れている我々でも躊躇するレッツノート。外観からは分かりませんが、分解を拒んだ設計なのは間違いありません。

お客様のPCは、ご購入時はWindows 7がインストールされていました。それから6年後、軽快な動作を期待してWindows 10にアップグレードされたそうです。ところが直後、BIOSやWindows 10は正常に起動するものの、起動してからわずか15分ほどで突然電源が落ちてしまうことが度々発生するようになったそうです。慌てて再度起動しても、数秒から数分程度で電源が切れてしまう状態だったため、もう使うことがなくなり…。それから4年。当社の噂を聞いて、ひょっとしたら復活できるかも?と、サブマシンとして再び使えるようにしたい、とご依頼をいただきました。

現象を確認しながらお話をお伺いしていると、本体底面が異常に熱くなっていることに気が付きました。このような症状は通常、CPUの熱暴走や冷却ファンの不具合などが原因として考えられます。

マザーボードに触るのに最小の手数で分解しましたがこの通り
キーボードやタッチパッドなどもこの様子

レッツノートの分解は難易度が高く時間もかかります。慎重に分解してみると、CPUとヒートスプレッダー間のグリースが固着していました。数年で劣化するので無理もありません。そしてよく見てみるとファンの羽根が固くなっていて、回転していないことが分かりました。指で回してみるとかなりの抵抗(回転抵抗)を感じました。原因は、ファンの軸受け部分にあるグリースの固着。それにより内部の排熱ができず、CPUが熱暴走してしまい電源が落ちる。と、予想通りの結果でした。つまり、CPUのグリースを塗り直し、ファンを元通り回転できるようにすれば、突然電源が落ちる現象は解消されます。

中央に3か所あるグレーの長方形の部分が、CPUやチップセットに固着したグリースの残骸。アルコールで柔らかくしながらカリカリ削ります。
ヒートスプレッダーにも固着したグリースが転写されています。これもいったん綺麗に除去します。

ところで、CPUとヒートスプレッダーとの間(接合面)に塗るグリースには、熱伝導性を高めるための特殊な材料が使用されます。このグリースは一般的に「熱伝導ペースト」と呼ばれ、主にシリコンや金属酸化物などの熱伝導性の高い素材で構成されています。これらの素材は熱を素早く伝える特性を持ち、CPUと冷却装置の間に均等に分布することで熱の効率的な放熱を実現します。

グリースの役割は二つあります。まず、接合面の微細な凹凸を埋めることで、表面の接触を最大化し、熱の伝導を促進します。また、接触面の微細な空気層を防ぐため、断熱を防止します。

通常、ここまで分解すると見過ごすわけにはいきません。いったん除去してから新しいグリースを再湿布しています。今回はCPUの発熱を考えて、熱伝導率が高いシルバーグリースを使用しました。

CPU回りにグリースを再湿布している途中の様子。柔らかく艶があるのが分かると思います。この後、薄すぎず厚すぎず丁寧に塗り直します。グリースは、CPU専用のシルバーグリースを使用。

次に、CPUや本体内部からの排熱を行うファンの修理です。ファン自体はもう流通していないため入手できなかったこともありますが、軸受けから羽根だけが取り出せるタイプだったので、リチウムグリースを再充填することにしました。流体軸受けのグリースもやはり特殊です。摩擦を低減し、スムーズな回転運動を実現するために重要な役割を果たします。

この種のグリースには、一般的にベースオイルと添加剤から構成されています。ベースオイルは粘度を持ち、軸受け内部に均等に広がることで摩擦を低減します。一方、添加剤はグリースの潤滑性や耐摩耗性を向上させる役割を果たします。流体軸受け用グリースの特徴的な性質の一つは、高温環境での安定性です。長時間の連続運転や高速回転(このファンの場合は最高5,000RPM)による摩擦によって生じる熱を効果的に分散し、軸受け部品を保護します。また、長期間の使用や振動にも耐える耐久性があります。

耐熱性と耐腐食性に優れ、高速回転用ファンなどに用いるリチウムグリース。実際にファンに充填したときの様子は撮影忘れ…。
画面中央やや左に見える丸い部品がファン。このファンの羽根を外してゴミを除去した後にリチウムグリースを再充填します。発熱していた部分の温度が20~30℃も下がりました。

分解の途中に気が付いたのが、メモリー(DDR3/SO-DIMM)がひとつ隠されていること。本体裏面からの容易に交換できるのは上段の1枚だけで、下段に位置する1枚は分解しないと触ることさえできない構造。そして上段には4GB、下段には2GBが刺さっていました。

本体底面からメモリーを覗いた様子。分解せずにはこの1枚しか交換できないという構造です。

今後、容易に拡張できるように、上下を入れ替えておきました。こうすれば、後から2GBのメモリーを4GBのものに交換すれば合計8GBにもできます。しかし、後から気が付いたらWindows10は32ビット版だったため、4GBまでしか使用できない・・・当時の標準仕様では2GBだったようで、販売店が4GBを追加したというお話を伺いましたが、だとしたら最初から64ビット版を入れて欲しかったかなと少し残念に思いました…。それでもお客様の用途では4GBでも十分なことは確認済みです。

DDR3 SO-DIMM。基板上部にある黒いフィルムの下に隠れた下段のメモリー。覆うように固定された黒いプラスチックを外さないと、下段のメモリーには手が出せません。下段には4GBを入れておきます。
上下のメモリーを入れ替えたので、容易に交換できるようになった上段のメモリー。(下)元々搭載していた2GBのメモリー。(上)当社でたまたま余っていた4GBもメモリーに交換してみるも…。

分解ついでというわけではありませんが、いつも気になるコイン電池。4年間もの間放置されていたとうことで、念のためコイン電池を交換しておきます。実際に電圧を測定すると電圧降下が確認できたので、そろそろ交換時期です。

時計とCMOS保持用のコイン電池。新品に交換します。
新しいコイン電池を取り付けた様子。絶縁フィルムと熱収縮チューブで包んで、元の位置に両面テープで固定しています。

無事に修理が終わり安定して動作するようになりました。ハードウェアの修理ができたら、HDDからSSDへの換装も承っていたため、元の環境を維持したままWindows10を使い続けることができるようになりました。※SSDはお客様自身でご用意されたものに換装しているため、写真は掲載していません。

復活したレッツノート。発熱による熱暴走もなくなり1~2時間程度エージングした様子。HDDからSSDにも換装しているので、これまでよりもずっと快適になりました。

作業の終了後、お客様には詳細に今回の修理の内容をご説明させていただきましたが、とても喜んでいらっしゃました。受け取るまでの間、レッツノートの不具合をいろいろ調べられたようでしたが、ファンが原因で不安定になることが多い機種のようでしたと。まさにその通りなのですが、ファンの羽根を取り外せるのもノート型PCには珍しく、メーカーもそれを周知なのでは?と察しました。

最後に。グリースは長期間の使用においてもその性能を維持し続けますが、定期的なメンテナンスが重要です。時間とともに劣化し、乾燥や固着が生じる可能性があります。当社では、修理やメンテナンス中、必要に応じてクリーニングやグリースの塗り直しを行います。自動車で言うとオイル交換のような意味合いでしょうか。グリースを塗り直すことで、動作安定性と耐久性を向上させることができると言ってもよいでしょう。

もしパソコンのメンテナンスや動作の不安定さにお悩みでしたら、どうぞお気軽に当社にご相談ください。私たちがパソコンを最適な状態に戻すお手伝いをいたします。

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